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しゅうふうふき

秋風不帰

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1939(昭和14)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,593 字 · 28 页

青空文庫

すっかり娘らしい姿だ、しかし驚いたのはその顔だった。

まっ黒だと思ったのは日に焼けたのではなかった。恐らく谷川で沐浴をしたものであろう、小麦色ではあるがしっとりと潤いのある肌、触れば黒耀石の露となってこぼれそうな眸に、あくまでも紅い蕾のような唇、……それはまるで人の違ったような美しさである。

「これは……、まるで、見違えるぞ」

「まあ、なにをおっしゃいますの」

お高は眩しそうにまたたいた。自分では意識していないのだろうが、じっと見詰めながらまたたきをするその表情には、相手が自分の美しさを認めてくれたことに対する本能的な満足感が表われていた。

「お高、おまえ何歳になる」

夏雄は初めて見るように云った。

「若さまと十違いでございます」

「十七か、……驚いたなあ、昨日までとあんまり違うので、眼が覚めた」

「着替えましたから、それで……」

「そればかりではない、一昨日馬を曳いていた時とはまるで人が違ったようだ。いまのおまえを見ると、あの馬子姿など思い出すことは出来ない。まして柿の木へ登っては叱られたあの頃のおまえを考えると」

「まあ若さま、あんなことを御存じでございますか」