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かがくがへそをまげたはなし

科学が臍を曲げた話

海野 十三

「新青年」1934(昭和9)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,453 字 · 9 页

青空文庫

ところが或る時、研究室で飛んでもないことが起りました。超短波を盛んに起して置いて、実験者がそれに手を近づけましたのですが、本当は先ず手を先に電極板の間に入れて置いて、あとでスイッチを入れて超短波を起す方がよいのです。このときはつまり逆の順序でやりました。実験者は研究中のことですから、いろいろやって見る必要があります。そうしないとよい装置も出来ないし、性質も深く知ることが出来ません。実験者はその手を電極板の中央に入れる代りに、電極板の端の方に近づけてみました。恐らく違った結果が現れるだろうと思ったのです。近づけるに従って、指の股の辺がスースーと涼しくなりました。それを尚も近づけると、指が急に熱くなり始めました。それを辛抱していますと、急に手が吸いつけられるように、電極板に引寄せられました。

「こいつは、いかん!」

と思う間もなく、指が電極板の端に触れました。途端にうずくような痛みが感ぜられ、同時にコロリと下に落ちたものがあります。サーッと真赤な血が花火のように噴き出しました。

「ウム……」

実験者はもぎとるように手を強く引きました。手は幸い極板を離れました。