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かがくとぶんがく

科学と文学

寺田 寅彦

「世界文学講座」1933(昭和8)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,562 字 · 50 页

青空文庫

そうしてその問題と解決と結論とを、われわれにわかる言葉で記述してわれわれに示したとする。それを読んだわれわれが、それによって人間界の現象について教えられることは、ちょうど理論物理学的論文によって自然界の物理的現象について教えられるのと似かよったものであるとも言われよう。

しかし、こういう微分方程式は少なくも現在では夢想することさえ困難である。しかしそういうものへの道程の第一歩に似たようなものは考えられなくはない。

物理的科学が今日の状態に達する以前、すなわち方則が発見され、そうして最初に数式化される前には、われわれはただ個々の具体的の場合の解式だけを知っていた。そうして、過去にあったあらゆる具体的の場合を験査し、またいろいろな場合を人工的に作るために「実験」を行なった。それらの経験と実験の、すべての結果を整理し排列して最後にそれらから帰納して方則の入り口に達した。

文学は、そういう意味での「実験」として見ることはできないか。これが次に起こる疑問である。

実験としての文学と科学

たとえば勢力不滅の方則が設定されるまでに、この問題に関して行なわれた実験的研究の数はおびただしいものであろう。