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かがくにこころざすひとへ
科学に志す人へ
寺田 寅彦
「帝国大学新聞」1934(昭和9)年4月30日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,605 字 · 8 页
当時の輪講会は人数が少なくてそれだけに却って極めてインチームなものであり、至って「尤もらしく」ない「勿体臭く」ないものであった。
学生の数も少なかったから図書室などもほとんど我物顔に出入りして手当り次第にあらゆる書物を引っぱり出してはあてもなく好奇心を満足しそうなものを物色した。古い『フィル・マグ』〔Philosophical Magazine〕の中から「首釣の力学」や「人玉について」などという論文を発見してひどく嬉しがったりしたのもその頃であった。レーノルズの全集をひやかしてこの異彩ある学者を礼讃してみたり、マクスウェルの伝記中にあるこの物理学者の戯作ヴァンパヤーの詩や、それを飾る愉快に稚拙なペン画を嬉しがったりした。そんな下らないことが、今から考えてみると、みんな後年の自分の生涯になんらかの反響を残しているように思われる。
実験室でも先生から与えられた仕事以外に何かしら自分勝手のいたずらをした、その記憶があたかも美しい青春の夢のように心の底に留まっている。例えば、当時流行した紫色鉛筆の端に多分装飾のつもりで嵌められてあったニッケルの帽子のようなものを取外してそれをシャーレの水面に浮かべ、そうしてそれをスフェロメーターの螺旋の尖端で押し下げて行って沈没させ、その結果から曲りなりに表面張力を算出して先生