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かがくのじょうしきのため

科学の常識のため

宮本 百合子

「新女苑」1940(昭和15)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,479 字 · 19 页

青空文庫

少くとも私は知っていないことがどっさりあった。その半面には、もっと知っていると思うところもある。私が感興を覚えたのはそこのところであった。一つの風変りな形で、しかも実際的なブック・レビューをして見たら面白くもあるしためにもなるだろうと思ったきっかけはそこにある。そのブック・レビューの方法というのは、この一冊の「科学の学校」を土台として、それぞれの項目について私たちの身近にある種々の科学の本を思い出し、いくらかまとめて整理し、感想をもそれにつけ加えてゆくという方法である。つまり私たちが知識を愛し、それを身につけ、自分やひとの生活をゆたかにして何かの意味で人間の進歩に役立ってゆきたいと思っている日頃ののぞみは、こういう形でも具体化される一歩があろうというわけである。

若い婦人の感情と科学とは、従来縁の遠いもののように思われて来ている。昔は人間の心の内容を知・情・意と三つのものにわけて知は理解や判断をつかさどり、情は感情的な面をうけもち、意は意志で、判断の一部と行動とをうけもつという形式に固定して見られ、今でもそのことは、曖昧にうけいれられたままになっている点が多い。