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かがくじょうのこっとうしゅみとおんこちしん

科学上の骨董趣味と温故知新

寺田 寅彦

「理学界 第十六巻第七号」1919(大正8)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,108 字 · 7 页

青空文庫

しかしこれが往々にして骨董的傾向を帯びる事がある。すなわち当面の問題に多少の関係さえあれば、これが如何に目下の研究に縁が遠くまた如何に古くまた無価値ないしは全然間違ったものでも無差別無批評に列挙するという風の傾向を生じる事もある。この傾向は例えばドイツの物理学者などの中にしばしば見受ける所である。別に咎むべき事でもないと思うが、とにかく骨董趣味に類した一種の「趣味」と見ても差支えはなかろう。

これと正反対の極端にある科学者もある。その種類の人には歴史という事は全く無意味である。古い研究などはどうでもよい。最新の知識すなわち真である。これに達した径路は問う所ではないのである。実際科学上の知識を絶対的または究極的なものと信じる立場から見ればこれも当然な事であろう。また応用という点から考えてもそれで十分らしく思われるのである。しかしこの傾向が極端になると、古いものは何物でも無価値と考え、新しきものは無差別に尊重するような傾向を生じやすいのである。

これほど極端でないまでも、実際科学者としては日進月歩の新知識を修得するだけでもかなりに忙しいので、歴史的の詮索までに手の届かぬのは普通の事である。