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かがくひはんのかだい

科学批判の課題

三木 清

「新興科学の旗のもとに」新興科学社、1928(昭和3)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,229 字 · 40 页

青空文庫

ギリシア的学問と自然科学との理念上の差異は、両者が用いた手段において明瞭に認識され得るであろう。ギリシア人が見出したところの一切の学問的認識の手段は概念すなわちロゴスであった。『ポリテイア』におけるプラトンの熱情的な感激は、究極は、その当時初めて認識の大いなる手段としての概念の意味が自覚されたということから説明され得る。アリストテレスによれば、まさにソクラテスが概念の発見者である。概念こそはひとが他の者をして、彼が全く何事も知らないと告白するか、もしくはそのことがあたかも盲目なる人間の行動営為のごとく消滅することのなき永遠の真理であると承認するか、せしめることなしにおかぬところのものである。ソクラテスのこの体験は彼の弟子たちによって学問的意識にまで高められたのである。ヘレニズムの精神のこの発見のほかに、ルネサンスの時代の子供として学問的労作の第二の大いなる道具として現われたのは、合理的なる実験であった。それはこれなくしては今日の自然科学が不可能であるがごとき、信頼すべく統制されたる経験の手段としての実験である*。

* Max Weber, Wissenschaft als Beruf. 参照。