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かがくほうほうろん
科学方法論
戸坂 潤
「科学方法論」岩波書店、1929(昭和4)年6月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,035 字 · 284 页
個別的なる無限の対象の内から更に選択を施すことが茲に必要となる。歴史学が或る統一ある記述であるためにはそうなければならないであろう。この場合の選択は何を標準として行なわれるか。
記述すべき歴史的事件は、人々にとって――但しそれは必ずしも歴史家個人ではない――個別的なものとして、何か夫々特有の興味をもち人々の関心を占めることが出来るものでなければならないことは、明らかである。処で人々が或る歴史的事件に興味と関心を有つのは、その事件が人々の評価している何かの価値――文化価値――に対して何かの意味を有つからである。無論人々は或る事物を評価して之を毀誉褒貶するであろう。併しこの事物を積極的に評価しているにしても消極的に評価しているにしても、この歴史的事件はこの事物――それが評価されて価値となる――に対して、たとい等しくないまでも、とにかく人々が無関心でない限りは、何かの意味を有つことができる。この歴史的事件はこの価値に関係づけられて意味をもつ。価値への関係づけがそれ故歴史的資料を選択する標準となり、之に基いて或る限られたる範囲内の事件のみが記述され得、又されねばならないのである。