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かがくほうほうろん

科学方法論

戸坂 潤

「科学方法論」岩波書店、1929(昭和4)年6月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,035 字 · 284 页

青空文庫

真に個別的なるもの――個性――は一定の価値に関係せしめられて初めて理解されるべきであった。かかる価値は自然科学の対象の規定に少しも与かる理由を見出さない。個別化はそれ故矢張り歴史科学にのみ特有であるのである。それであるから、自然科学は、その法則は、個別的なものを取り扱わない、というリッケルトの言葉は、一応誤ってはいないであろう。――ただ批難されなければならぬものと見えるのは、この言葉によって事実上暴露されている処の、自然科学的法則概念の理解の不充分さである。元来自然科学的概念構成の限界を決定することによって歴史科学の概念構成の特色を説明しようとするのが、科学論の理論上の手続きであったのであるから、この自然科学的概念構成の特徴として掲げられた法則概念がすでに不充分であることは、必然に自然科学的並びに歴史科学的概念構成の理論を薄弱にしないではおかない筈である。特に今は自然科学に就いて――歴史科学に就いては後を見よ――この弱点が恰も指摘されたのであった。

* フリッシュアイゼン・ケーラーはこれを一例としてリッケルトの困難を指摘し得たと考えたが、それは誤解であるであろう(Wissenschaft und Wirklichkeit, S. 151)。