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かがくほうほうろん

科学方法論

戸坂 潤

「科学方法論」岩波書店、1929(昭和4)年6月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,035 字 · 284 页

青空文庫

精密という概念を用いる動機は他にある筈である。或る範囲の代数が用いられるからであるか――メンデリズムの場合に於ける組み合せの如く。生物学に代数を用いることが出来たからと云って――それに応用の範囲は極めて小部分に過ぎない――、生物学が精密となったと思うならば、違算である。例えば群論が礦物学へ応用される場合に就いても亦そうあるであろう。何人も又代数式が――方程式が――用いられたからと云って精密科学を獲得したとは考えない(例えば経済学的公式***)。精密という概念が用いられる動機は依然として他にあるのであろう。

* von Kries, Die Prinzipien der Wahrscheinlichkeitsrechnung, S. 192 ff 参照。

** この区別を吾々はプランクから学ぶ。自然科学に於ける統計的法則はボルツマンによって促された(Planck, Physikalische Rundblicke)。

*** これはすでに、単に所謂法則を有つことだけでは科学の精密性はまだ与えられるものではない、ことを示しているであろう。

数学の応用が科学を勝義に於て精密ならしめるのは、この数学が、数と空間との対応を含む場合であるのである。