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かがくじちょう

科学時潮

海野 十三

「新青年」1928(昭和3)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,486 字 · 5 页

青空文庫

一行は見す見すこの恐るべき殺人犯人を見遁すより外に仕方がなかった。

――それから数分後、一大音響と共に、突如、死の谷から空中に浮び上った巨大なる物体があった。それは大きな飛行船を縦にしたようなものであった。それは恐ろしい速力で飛び去った。その速力は光の速力に近いもので人間には迚も出せそうもないものであった。

でこの解決を物理学界の某博士がつけている。

「この怪人こそは、金星に棲息する者である。彼はラジウム・エマナチオンで、斯くの如き怪速力を出して居るものと思う。地球への来訪の意味は不明だが、多分生物学研究にあるらしい。

最後に予は断言する。この怪人達は、地球人類とは全く別箇の系統から発達進化した生物である。換言すれば彼の怪人は、植物の進化したものである。故に銃丸が入っても別に死せず、唯「緑の汚点」として発見せられた緑汁の流出があるばかりである。殺人罪といったような不道徳を怪人が解せなかったのも、抑々植物には情感のないことを考えてみてもよく判ることではないか。……」

植物系統の生物というところが此の科学小説のヤマであるが、小説として構想の奇抜なことは勿論、実際の学問の上から言っても大いに考えて見る可き問題ではあるまいか。