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かがくろん

科学論

戸坂 潤

「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页

青空文庫

でこうしたわけで、実験を自然科学に於ける実験的操作に限定せねばならぬ積極的な理由はないのである。無論こう云っても、社会科学に於ける実験的操作が、自然科学に於ける夫と全く同じだというのではない。ただ実験的操作の概念を普通よりももっと拡張することが、研究手段乃至方法の統一的な理解の上から云って、必要だというのである。一切の社会的歴史的(過去の又現在の)出来事は、階級・政党・政府・インスティチュート・又個人・等々の主体の実践の結果だという資格から、一つの試みである。そして又それは後々の同一性質の出来事の先例となるのである。その限りこうした出来事は「実験」としての効果を持っているのである。蓋し実験とは、実践の最も要素的な形態に他ならず、やがて社会に於ける産業・政治活動にまで発展する要素だったからだ。――かくて、社会科学的方法に於ても亦、或る意味に於ける実験的操作が行なわれると見得るのでなくてはならぬ。

だが、自然科学に於ける実験的操作も、社会科学に於ける夫も、決してそのまま夫々の科学の実験的方法となるのではない。之等の手段は夫々の科学の統一的な研究様式によって定着されて初めて、この夫々の研究様式の一内容となり得るに過ぎない。