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かがくろん

科学論

戸坂 潤

「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页

青空文庫

そればかりではない、このような生産手段の発達は各々の部分に於ては個人の意識的工夫に依存すると考えられるが、その全体に於ては、各個人に対してすでに自分の意志では左右出来ない客観性を持っている。生産手段は個人一般という仮定物から見れば個人の自由によって発達することにもなるが、本当の個人である各個人にとっては、その意志の自由とは独立に発達する。この生産手段は超個人的に、社会的に、客観的に、歴史的発展をなすものとして、言い表わされねばならない。之によって決定される生産力は、単にその材料が物理学的(例えば機械・道具・工場)乃至生物学的(人間的労働力)物質を根柢としているからばかりでなく、又今言った客観的だという意味からも、物質的でなければならないわけである。生産力は一つの唯物論的概念でなくてはならない。

この物質的な生産力の与件は、社会に於ける一定の生産様式を造り出し、この生産様式がそれに対応する一定の物質的生産諸関係をなり立たせる。この生産諸関係が、所謂経済関係と呼ばれる機構の本質であり、それが社会関係の基礎建築・下部構造をなす。ここに社会の物質的地盤が横たわる。