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かがくろん

科学論

戸坂 潤

「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页

青空文庫

一般的にダーウィン主義と呼ばれて好い進化論は、この基礎とこの先史的時間点とに於て、史的唯物論と交錯する。だが史的唯物論のプロパーな問題は、人間社会生活の原始的な諸条件とその発展との研究から初めて始まる。そこでは人類学的・考古学的・人種学的・土俗学的・な諸条件――それは現在に於ける原始民族の研究に俟つ処が甚だ多い――が、唯物史観的根本方法によって貫かれねばならぬ*。

* 例えばF・エンゲルスの『家族・私有財産・国家の起源』はこの研究の古典的な一例である。

併し史的唯物論の何よりもの特色は、夫が生産関係を基準として、社会の発展を最も統一的に客観的に段階づけることが出来るということである。マルクスによれば、社会は主に、アジア的・古代的(奴隷制度的)・封建的・近世資本主義的(市民社会的)の四つの生産様式の発展段階に分けられる(尤も最初の二つを一つにして三段階に数えても好い)。――之が歴史科学の記述のための根本区画なのである。

世界史のこのような段階づけが、マルクスに至って初めて意識的になったということは、原理上の意味がある。と言うのは、近世資本主義的生産関係に立たされるのでなければ、こういう区画に従う歴史記述の方法を意識することは出来なかっただろうからだ。