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かがくろん
科学論
戸坂 潤
「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页
価値の生産者は人間労働である。――この価値に基いて初めて商品交換は可能となる。そして一切の商品交換のための共通な手段として、特殊な物性と社会的機能とを具えた一定の商品として、金・貨幣が見出される。
人間は何時の世でも労働力を持ち又之を働かせる。だが資本主義社会に於ては、社会の大多数の人員が、特徴的に、労働手段と労働対象との一切の所有権を、産れながらに失って了っているということがその特色である。処が彼等が生活するためには、即ちその労働力を働かせるためには、労働の手段と対象とを一時的たりとも自分の手許に置いて使わねばならぬ。だが彼等労働力のみの所有者――労働者――が労働手段と労働対象とを使うということは、資本主義社会では、労働手段と労働対象との少数の私有者に彼等自身が使われるということである。この雇傭関係は、彼等多数の無産者が、生活するために、小数のかの私有財産の所有者に向って、自分の労働力を売り渡し、その価格として労賃を受け取るという、交換過程である。之は生きた労働力を商品と見立てた処の商品交換であるから、その場合の雇傭関係は自由契約の形式を踏むのである。