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かがくろん

科学論

戸坂 潤

「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页

青空文庫

与えられた与件そのものは変更することなく、ただ単に之を適宜に置きかえるということがその認識目的であって、そのための方法は、ただそうした意味の解釈にさえ役立てば良いのである。だから例えば自然の存在は人間の存在よりも先であり基礎的であるという実在的な認識の代りに、自然よりも人間の方が意義が深く価値が高いという意味上の認識が、置きかえられるのである。その結果人間が自然を産み出す(神が世界を創造した)かのような口吻の哲学体系も出来上るのである。宇宙の時間の流れの秩序はどうでもよくて、意味と意味とを直接に時間抜きにつらねるために、一切が瞬間(又は永遠)に還元される(瞬間は止まれ――メフィストとの賭けに負けたゲーテの「ファウスト」は叫んでいる、歴史の秩序を打ち切ったニーチェ――「瞬間は永遠である」、キールケゴールの書物 Der Augenblick 等々)。意味は存在ではないから宇宙的時間の上では零であり、瞬間なのだ。

* 拙著『現代哲学講話』及び『日本イデオロギー論』〔本全集第三巻および第二巻所収〕に於て、各種の解釈哲学の批評を与えた。

だが、今認識の目的が意味の解釈ではなくて現実の事物の把握であり、之をマスターすることであるとすれば、こうした解釈の範疇組織は、それ自身独立孤立しては全く用をなさない。