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ほどよいひと
程よい人
豊島 与志雄
「女性線」1949(昭和24)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,328 字 · 21 页
そして出来た金を、黒川に預けておけば、月に二割の利子は確実に殖える。期日をずらしておけば、利子だけで元金が払えるばかりでなく、雪だるまのように大きくなってゆく。かりに二十人から一万ずつ借りて二十万集めれば、月に四万儲かることになる。同僚へは、僅か一カ月のことだし、利子を払うには及ばないし、煙草の十個もお礼すればよかろう。それでも先方にとっては、銀行利子よりは遙かに上廻るのである。
「このようなこと、ほかへ洩らしてはいけませんよ。あなたの名誉にも関わる。私としては、御恩報じのつもりです。ほかの人がいかほど持って来ようと、断じて引き受けはしない。私は金貸しで、借りる方じゃありませんからね。」
黒川は愉快そうに大笑したのである。
私には金の入用があった。母への孝養のためもある。妹の扶養のためもある。それらは家庭に於ける私の当然の責務である。そのほか、三上京子との交際のために、多少の小遣がいる。給料だけではなかなかやってゆけないのだ。
京子は会社の女事務員で、まあ私と相愛の仲である。熱烈な恋愛をしたわけではなく、いつとなく情交を結んだという、甚だ平穏な関係なのだ。