轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ちごがふち
稚子ヶ淵
小川 未明
「早稲田學報」1906(明治39)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,097 字 · 8 页
」
二郎はその言葉を聞き、何となく悲しく感じて、姉に手を引れて林の裡から出た。……
二郎は心のうちで、どうして姉が斯様な山道を悉しく知ていようか……斯様なに暗いのにどうして斯様なに路が分るだろうかと訝かしがりながら歩るいていた。しかし姉はいつになく、沈んでいるように見えたので、自分も口を喊んで成たけ話をせまいものと黙って歩るいていたのである……。やがて大きな沢や、幾つかの渓を越えて、細い細い山途に差しかかると、山の端を離れて月の光りが渓川の水に宿っている。二人は黙ったまんまで途を歩いている……
この時姉は始めて弟を顧みて、さも名残惜そうにして見つめたのである。弟も月の光りに始めて青白い姉の顔をつくづくと眺めた。
「この道を真直に行くと、直きに彼の大きな原に出る、すると向うに家が見える。泣かんで早くお帰り! ちょうど月も出たから……妾は此処で見送っていますよ。」
二郎の声はもう涙に咽んで、
「じゃ姉さんは、やっぱり帰らないの……。僕は姉さんと一しょに行きたいから連れて行って頂戴! 僕は独りで帰るのは厭だ。」
姉は流石に躊躇ていたように見えた。さも哀しげに渓間の月影を見下して、果ては二人してさめざめと泣くのである。