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いねのいちにち
稲の一日
中谷 宇吉郎
「世界」1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,013 字 · 20 页
そういう問題もわれわれの人工米の場合には、何も心配は無い。むしろこの分化期における最適条件を探して、そういう条件の下に、栄養細胞組織を完全に分化させて、穂全体に籾をぎっしりつけるようにするという方向に、研究を進めればよい。変化し易い天然の気象条件の下でも、一穂に例えば五十粒つくところを八十粒にしようというふうに、耕種的にいろいろ研究が為されているのであるから、完全条件の下では、五割や六割の増収を目差すことは、そう無理ではないであろう。
もし一穂に着く籾の数を五、六割増すことが出来れば、密植による三倍の増収と併せて、それだけでも五倍の増収は、全く不可能なことではない。もっともそれには肥料の問題がはいってくる。栄養生長期間中にも、もちろん肥料は大切であるが、その方は完全な肥料を充分に施して、健全な稲を作ることにする。そして幼穂が形成し始めるまで、その肥料を充分に効かしておく。その時までに窒素や燐酸が不足すると、籾数が減って来るということが知られているので、そういう点はよく注意しておくことにする。ところがこの時期以後になってもまだ窒素が多いと、かえって稔実機能に障害を来し易いという研究が為されている。