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くうきおとこ

空気男

海野 十三

「モダン日本」1937(昭和12)年1月~8月、10月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,792 字 · 10 页

青空文庫

捕虜

清家博士は妻君のために雁字がらめに縛りあげられ、ベッドの金具に結びつけられた。もう逃げることはできなかった。

「なぜ俺の姿が見えるようになったんだろう。さっきあの発明器械を使ったときは、たしかに身体が見えなくなったのに」不思議不思議と考えているうちに、博士はやっとその理由を了解した。それは屋根で昼寝をしているとき雨にうたれたが、雨で全身濡れたため身体につけて置いた消身電気が濡れた服を伝わって逃げてしまったのにちがいない。身体を濡らすことはよくないことだと始めて悟ることができた。夜に入って、妻君がベッドの上に乗ったとき、博士はさも悲しそうな声を出して、戒めの綱を解いてくれるように哀願した。

「ほんのすこしだけですよ」

妻君は彼をベッドの上に引張り上げてやった。博士は間もなく、急にゴホンゴホンと咳をしだした。持病のぜんそくが起ったのである。

「は、早く早く。あの戸棚の一番下の引出しの奥の方に薬があるから、と、とって呉れ。ああウウ」

最後の手

清家博士がベッドの上で発作を起したので、愕いた妻君は博士の云うとおりに、戸棚の一番下の引出しを明けて、奥の方を探してみた。