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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

「男爵」と呼ばれる彼の本名は、帆村荘六。軍部に属する特務機関としての記号をM13という。このところ、数年の間に、めきめきと売出した若手の私立探偵であった。

記憶のよい読者は、彼が、いつの間にか、東京警備司令部の地下街に忍びこんでいたことや、今朝方のこと、お茶の水附近で、湯河原中佐や塩原参謀の乗っていた偵察機に、赤外線写真の撮影を依頼したことを、思い出されるに違いない。

帆村探偵の任務は、大日本帝国の体内に潜行している労農ロシアの特別警察隊、G・P・Uの本拠をつき、「狼」といわれる団長以下を、捕縛するのにあった。その「狼」は紅子を伴って歩いているらしい話であったが、彼こそは、先に、東京警備司令官別府九州造に変装してマニラ飛行聯隊空襲の夜の、帝都警備権を、自分の掌中に握っていた怪人物だった。

帆村探偵対「狼」の、血飛び肉裂けるの争闘は、漸く機が熟してきたようであった。

飛行船隊を発見す

地下街の司令部では、印刷電信機が、リズミカルな響をあげて、各所の要地から集ってくる牒報を、仮名文字に打ち直していた。

事態は、刻々に、うつりかわって、北満、朝鮮国境からの通信が、いつもの二倍になり三倍になり、尚もグングン殖えて行った。