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くうしゅうそうそうきょく
空襲葬送曲
海野 十三
「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页
お父さん使って下さい。顔にあてるのはこうするのです」
一座が呆然としている裡に、弦三は大得意で立ちあがった。
「いや、もう沢山、もう沢山」長造は、そのお面みたいなものを、弦三が本気で被せそうな様子を見てとって、尻込みしたのだった。「わしはもういいから、素六にでも呉れてやれ、あいつ、野球のマスクが欲しいってねだっていたようだから丁度いい」
「野球のマスクと違いますよ、お父さん」弦三は躍起になって抗弁したのだった。「いまに日本が外国と戦争するようになるとこの瓦斯マスクが、是非必要になるんです。東京市なんか、敵国の爆撃機が飛んできて、たった五噸の爆弾を墜せば、それでもう、大震災のときのような焼土になるんです。そのとき敵の飛行機は、きっと毒瓦斯を投げつけてゆきます。この瓦斯マスクの無い人は、非常に危険です。お父さんは、家で一番大事な人だから第一番に、これを作ってあげたんですよ」
「うん、その志は有難い」と長造は一つペコンと頭を下げたが、それは申訳に過ぎないようだった。「だが、この東京市に敵国の飛行機なんて、飛んで来やしないよ。心配しなさんな」
「そんなことありませんよ。