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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

あんたは、失業者で、あたしはウェイトレス。こんな騒ぎになったればこそ、あんたも大威張りで、物を拾って喰べられるしサ……」

「オイオイ」

「あたしも、お店が焼けちゃったから、出勤しないであんたの傍にいられるしサ、嬉しいには、違いないけれど……」

「嬉しいところで、いいじゃないか」

「でも、あんたには、愛国心が、見られないのが、残念よ」

「弱ったな。僕だって、愛国心に、燃えているんだぞ」

「アクロン号が、来るというから、あたし、考えたのよ」

「何を、考えたのだい」

「日本が興るか亡ぶかという非常時に、お飯事みたいな同棲生活に、酔っている場合じゃないと、ね」

「同棲生活※(感嘆符疑問符、1-8-78) 同棲まで、まだ行ってないよ。六時間前にバラックを建てて、入ったばかりじゃないか」

「あたし達、若いものは、こんな場合には、お国のためにウンと働かなきゃ、日本人としてすまないんだわ」

「そりゃ、僕だって、働いても、いいよ」

「じゃ、こうしない」

「ウン」

「あたしは、サービスに心得があるから、これから、毒瓦斯避難所へ行って、老人や子供の世話をするわ」

「僕は、どうなるんだ」

「あんたは、外に立っていて、ヨボヨボのお婆さんなんかが、逃げ遅れていたら、背中の上にのせて、避難所へ連れて来る役を、しなさいネ」