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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

「紙洗大尉どの、井筒副長どのが、至急お呼びであります」

「おお、そうか。直ぐに参りますと、そう御返事申上げて呉れい」

紙洗大尉は、傍の帽子掛けから、帽子と帯剣とを取ると、身繕いをした。

「直ぐ帰って来るからな、一服しとれよ」

そう云って彼は敏捷に、部屋から出て行った。

だが其の紙洗大尉は、二十分経っても、三十分経っても、帰って来なかった。一時間の時間が流れても、彼の靴音は、聞えなかったので、二人の同期の友人は、云い合わせたように立上った。

「どれ、部屋へ帰って、今のうちに、辞世でも考えて置こうかい」

「俺は、いまのうちに、たっぷり睡って置こうと思うよ」

そこへ、紙洗大尉が、飛ぶようにして、帰って来た。

「おいどうした」

「大いに深刻な顔をしているじゃないか」

紙洗大尉は、二人の友人の問を、其儘聞き流して、ジッと立っていた。

「おい、どうしたのかと云ったら!」

そういった友人の、情深い手は、紙洗大尉の肩にかけられた。

「うん、大したことでは無い」彼は遂に口を開いた。「唯、天佑というものが今度の場合にも、お互に必要なのだ。いずれ判るだろうがね」

「ははァ、そんなことか」