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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

「そうだよ。お祖父ちゃんとなら、どこへでも連れてって貰うよ」無心の三吉が、嬉しそうな声をあげた。

「三吉は、まだ七つだけれど、恐ろしく目のよく利く奴さ。三吉の目と、わしの耳とを一つにすると、一人前の若者よりも、もっといいお役に立つかと思う位だよ」

「三吉は、小さいときから、父親のない不幸な子だ。それを又ここで苦しめるのは、伯父として忍びないです」

「ああ、兄さんも、お父さんも、ありがとう。どっちも、三吉の身の上を、それぞれ思っていて下さるのです。あたしは決心しました。三吉も、お祖父さんと行きたいと云っている位だから、あたしは母親として、それを許しますわ。今は、日本の国の、一つあっても二つあるとは考えられない非常時です。この磯崎では、一人の三吉を不憫がっていますけれど、あすこから電話線を伝って行ったもう一つの端の東京には、三吉みたいな可愛いい子供さんが何十万人と居て、同じようにアメリカの爆弾の下に怯えさせられようとしているんです。そのお子さん達の親たちは、お父さんも、あたしのような母親も、どんなにかせめて子供達だけにでも、空襲の恐怖から救ってやりたいと考えていらっしゃるか知れないんです。