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くうしゅうそうそうきょく
空襲葬送曲
海野 十三
「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页
。故に本職は、各人が此辺の事情を理解し、指揮者の命に随い、官民一体となって此の重大事に善処せんことを望むものである。吾が国の家屋は火災に弱く、敵機の爆撃によって相当の被害あるべく、又非常時に際して種々の流言蜚語あらんも、国民は始終冷静に適宜の行動をとることによりて其の被害程度を縮少し、空襲怖るるに足らずとの自信を持ち得るものと確信する。徒らなる狼狽は、国難をして遂に収拾すべからざる状態に導くものである。皇国の興廃は諸君の双肩に懸れり、それ奮闘努力せよ。右布告す。昭和十×年五月十日。東京警備司令官陸軍大将別府九州造」
JOAKが聞える五十キロの範囲の住民たちは、この布告を聴くと、老いたるも若きも、共にサッと顔色を変えた。
夕闇深い帝都の空の下には、異常なる光景が出現した。
ラジオの高声器のある戸毎家毎には、近隣の者や、見も知らぬ通行人までが、飛びこんで来て、警備司令部の放送がこれから如何になりゆくかについて、耳を聳てるのだった。
街を疾駆する洪水のような円タクの流れもハタと止り、運転手も客も、自動車を路傍に捨てたまま、先を争うて高声器の前に突進した。