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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

「いいえ、暗くなったんで、判りませんわ」

「非常管制の警報らしいが、何分位消えているんだっけな」

「お父さんは、忘れっぽいのね。三十秒の間消えて、また三十秒つき、それからまた三十秒消えて、それからあと、ずっと点くのですよ」

「感心なもんだな、覚えているなんて――」

三十秒経ったのか、電灯がパッとついた。

「今度は時計を見てるよ。これで三十秒経って消えたら、いよいよ本物だ」

「呀ッ、消えましたわ」

お妻の声には恐怖の音調が交っていた。

間もなく、電灯は再び点いた。

「ほうら、見なさい。いよいよ非常管制だ。ははァ」

「誰か、表の電灯を消して下さい」

「もう消しましたよオ」真暗な店の方から、返事があった。

「お父さん。ここの電灯も消して、ちょうだい。あたし、怖いわ」長女のみどりが、奥の間へやってきた。

「ここは見えやしないよ」

「だって、戸の隙間から、見えちまうじゃないの」

「じゃ、こうしとこうかな。手拭を、姐さん被りにさせて」

「ああ、それで、いいわ」あとから附いて来た紅子が云った。

「家の中を皆、真暗にしてしまうんですもの。暗くちゃ、怖いわ」

そこへ、店の方から、ドカドカと上りこんで来た者があった。