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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

バラバラと、弾丸が飛んでくる!

丁度、そのとき、異様な響をたてて、一台の飛行機が、火焔に包まれ、錐揉みになって、落下してきた。焼けのこった機翼の尖端に、チラリと、真赤な日の丸が見えた、と思った。次の瞬間には、囂然たる音響をあげて放送局裏の松林の真上に、機首をつっこんだ。パチパチと、物凄い音がして、松林が、ドッと燃えあがった。急に、あたりは、赤々と照し出された。そこは、吉奈軍曹が、突入したあたりだった。

見よ、局舎のまわりには、四五百名近い人間が集っていた。彼等の半分は、陸軍々人だった。のこりの半分は、背広だの、学生服だの、雑然たる服装をしていた。顔は、マスクで見えない。悉くの人間が、防毒マスクをしていた。軍隊と市民との混成隊とでも云いたいものであった。

(なぜだ。なぜだッ)

東山少尉は、不思議な軍隊を向うに廻して不審をうった。彼等は、こちらの陣地を認めて、小銃を乱射し、手榴弾を投げつけた。小銃はとどいたが、手榴弾は、ずっと遠方で炸裂した。

軍隊を狙撃する軍隊なのである。そのような、不可解な軍隊を向うに廻して、東山少尉の部下は、敵慨心を起す前に、悒鬱にならないわけにゆかなかった。