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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

彼は、軍帽を、床の上に抛げ捨てた。房々した頭髪が、軍人らしくもなく、ダラリと額にぶら下った。それから彼は、胸の金釦を一つ一つ外していって、上衣をスッポリ脱ぎすてた。軍服の下に現われたものは、焦茶色のルパシカだった。

「放送局の方々よ」彼は団長らしい落付を見せて、だが鋭く、呼びかけた。「われわれは、戦争否定主義の者です。戦争は、即時やめさせなければならない。そうでないと、世界の平和は来ない。それには、第一に、日本が武装を捨てることだ。私が今、軍服を脱いだように。――で皆さん、僕達同志は、そういう意味に於て、この機会に世に出たのである。雷門を中心とし、下谷、浅草、本所、深川の方面では、同志が三万人から出来た。貴方たちも、加盟して戴きたい。どうです!」

局員は、申合わせたように、黙っていた。

「返事がなければ」と、例の男が、たちまち恐ろしい面を輝していった。「主義反対と見なしますぞ。われわれが、道々執って来たと同じ方法により、主義反対の者の解消を要求する」

キラリと、ルパシカ男の手に、短銃が光った。

「……」

誰も彼もが、一せいに、両手をあげた。

「それなら、よろしい。