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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

「司令官の御心配は、近くに起る太平洋方面からの襲撃を顧慮されてのことじゃ」

「そうでもありましょう。しかし、快速をもった敵機に対して、性能ともに劣った九二式や九三式で、太刀打ちが出来る道理がありません。帝都の撃滅は、予想以外に深刻であります」

「……」参謀長は、答えなかった。

伝令が、パタパタと駈けてきた。

「川口町防空隊からの報告でありますッ」

「閣下」有馬参謀長は、司令官の前に直立した。「川口町からの報告が入りました。読みあげさせましょうか」

「いや、よろしい」司令官は、不機嫌に、頭を左右に振った。

「その報告書を、こっちへ、寄越し給え」将軍は、ひったくるようにして、報告の紙片を、手にとった。

「敵国航空軍と覚しき約十数機よりなる飛行隊は、本町上空を一万メートルの高度をとって、午後九時五十分、北北西に向け飛行中なり。以上。川口町防空隊長、網島少尉」

司令官は、紙片を、掌のうちに握り潰すとポイと屑籠の中に、投げ入れた。

「閣下」参謀長が、やや気色ばんで、問いかけた。「唯今の報告は、なんでありましたか」

「出鱈目じゃ」司令官は、吐き出すように云った。「それより君は、部下を、ちと静かにさせては、どうか」