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くうしゅうけいほう

空襲警報

海野 十三

「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页

青空文庫

そいつはすてきにうまくて、文字どおり頬っぺたが落ちるようだった。

「義兄さん。あのコレラ菌を持っていたのはやはりスパイでしょうか」

「ウン、立派なスパイだ。日本にまぎれこんで、秘密をさぐっては本国へ知らせるスパイもあれば、あんなふうに、日本に対してじかに危害を加えるスパイもある」

「いまのスパイはS国人ですか」

「いや違う。東洋人だったよ。日本人か、他の国の人間か、いまに警察と憲兵隊との協力でわかるだろう。とにかくS国人に使われているやつさ」

「日本人だったら、僕は憤慨するなあ。しかしS国というのは悪魔のようなことを平気でやる国ですね」

「これまでの戦争は、本国から遠く離れた戦場で、軍隊同士が戦うだけでよかった。しかしこれからの戦争は、軍隊も人民も、ともに戦闘員だ。そして戦場は、遠く離れた大陸や太平洋上だけにあるのではなく、君たちが住んでいる町も村も同じように戦場なんだ。だからあんなふうにスパイが細菌を撒いたり、それから又敵の飛行機が内地深く空襲してきたりする」

「すると僕も戦闘員なんですね」

「そうだとも。立派な戦闘員だ。非戦闘員はというと重い病人と、物心のつかない幼児と、足腰も立たないし、耳も、眼も駄目だという老人だけだ。