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くうしゅうけいほう

空襲警報

海野 十三

「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页

青空文庫

あれなら、この五倍ももつ。今くらいの薄いホスゲンなら五十時間の上、大丈夫だ」

「そいつは、どの位出せば買えるかね」

「安いものですよ。たしか、六、七円だと思ったがね」

「六、七円? そりゃ安い。山登を一回やめれば買えるんだ」

「僕は、さっきこのおじさんに教わったように炭と綿とを使って、もっと楽に口につけられるような防毒面を自分で作るよ。断然、その方が安いからな」

「でも、保つ時間が短いよ」

「なァに、換えられるような式にして、三つか四つ炭と綿の入った缶を用意しておけばいいじゃないか」

「僕はその上、水中眼鏡をかけて、催涙瓦斯を防げるようにしようかな」

若い人たちの間には、防毒面の座談会が始まった。同室の人たちは、横から熱心にそれを聞いていた。そしてめいめいの心の中に思った。――

(今度東京へ帰ったら、まっ先に防毒面を手に入れよう……)と。

それから間もなく、毒瓦斯地帯を無事に通過することができた。

「篠ノ井、篠ノ井……」

と駅夫のよぶ声が聞えてきた。もう毒瓦斯がない証拠だ。窓は明けはなたれた。そとから涼しい、そして林檎のようにおいしい(と感じた)空気がソヨソヨと入ってきて、乗客たちに生き返った思をさせた。