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ぬすむおんな
窃む女
黒島 伝治
1923(大正12)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,734 字 · 18 页
山出しを頼むと一束に五銭ずつ取られるからである。
お里は常からよく働く女だった。一年あまり清吉が病んで仕事が出来なかったが、彼女は家の事から、野良仕事、山の仕事、村の人夫まで、一人でやってのけた。子供の面倒も見てやるし、清吉の世話もおろそかにしなかった。清吉は、妻にすまない気がして、彼自身のことについては、なるだけ自分でやった。が、お里の方では、そんなことで良人が心を使って病気が長びくと困ると思っていた。清吉の前では快活に骨身を惜まずに働いた。
木は、三百束ばかりあった。それだけを女一人で海岸まで出すのは容易な業ではなかった。
お里が別に苦しそうにこぼしもせず、石が凸凹している嶮しい山路を上り下りしているのを見ると、清吉はたまらなかった。
「ひまがあったら、木を出せえ。」彼は縫物屋が引けて帰ったお品に云いつけた。
「きみも出すか、一束出したら五銭やるぞ。」
姉よりさきに帰っている妹にも云った。きみはまだ小さくて、一束もよく背負えなかったが、
「一束に五銭呉れるん。そんなら出さあ。」
きみは、口を尖らして、眼をかゞやかした。
「出すことなるか?」
「うん、出さあ。