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まどにさすかげ

窓にさす影

豊島 与志雄

「小説公園」1952(昭和27)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,068 字 · 26 页

青空文庫

どうして祖母の笑顔だけが見えない筈があろう。私はそれを期待したが、一度も見えなかった。

祖母の遺骨はまだ家に祭ってあって、初七日がすんでから、墓に納めることになっていた。初七日から次々に七日七日と、煩雑な仏事が待っていた。そして一番煩雑な初七日は、葬式のあとまもなくやって来た。来客がたくさんあるので、私は忙しくなった。

けれども、私はもう余り手伝わないことにきめた。A叔母さんにそう言うと、A叔母さんはそれでいいでしょうと賛成してくれた。

もともと、私はA叔母さんを余り好きではなかった。女学生みたいな子供っぽいところもあり、ひどく厳格な怖いところもあり、声高く笑い興ずることもあり、真正直な理屈を主張することもあり、どうも形態の知れないひとのようで、親しみにくかった。ところが、祖母の病気のことから、ひどく私の気にかかることが起った。

二ヶ月ばかり前の頃だった。A叔母さんが見舞いに来て、茶の間で暫く母と話していった。私もその席にいた。祖母の病気はまださほど重いとは見えなかったが、母はいろいろ容態を話して、何しろ老年なのでと訴えた。すると、A叔母さんはじっと考えてる風だったが、突然、眼が宙に据わり、頬の肉が緊張した。