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まどにさすかげ
窓にさす影
豊島 与志雄
「小説公園」1952(昭和27)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,068 字 · 26 页
祖母がふうわりと私を包んでくれていたその薄衣が、剥ぎ取られて、私の存在がはっきりしてき、暗がりの中にいた私が俄に脚光を浴びたような工合だった。祖母はほんとに私を可愛がってくれた。私はほんとに祖母に甘えていた。その祖母が亡くなってみると、私はへんに肌寒いのだ。
私がそのような感懐に耽っていると、兄と利光さんは、葬儀の形式について論じ合っていた。兄は言った。
「仏事というものは実に煩雑なものさ。然し僕は、こういう形式に大して反対しないよ。少くともそれには、故人のことを早く忘れさせてくれるという意味がある。死体をいきなり地中に葬ってみ給え。未練とか心残りとか、何かが後まで残る。ところが、祭壇を造り、いろいろな物を供え、香を焚き、読経をし、供養と称して飲み食いをするんだから、もうこれでいい、これで済んだという気になって、故人のことをさっぱりと忘れることが出来る。つまり、忘れてしまえ、忘れてしまえという意味で、こうして無駄に時間をつぶし、飲み食いをしてるのだと思えば、腹も立たないよ。坊主までが、酒を喰い肉を喰って、早く忘れてしまいなさいと、勧告してるみたいじゃないか。