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りっしゅんのたまご

立春の卵

中谷 宇吉郎

「世界」1947(昭和22)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,450 字 · 17 页

青空文庫

ところが今年の立春には、丁度その魏氏が宣伝部の上海駐在員として在住、ランドル記者も上海にいるので、再びこの実験をやることになった。

ラジオ会社の実況放送、各新聞社の記者、カメラマンのいならぶ前で、三日の深夜に実験が行われた。実験は大成功、ランドル記者が昨夜UP支局の床に立てた卵は、四日の朝になっても倒れずに立っているし、またタイプライターの上にも立った。

四日の英字紙は第一面四段抜きで、この記事をのせ、「ランドル歴史的な実験に成功」と大見出しをかかげている。立春に卵が立つ科学的根拠はわからないが、ランドル記者は「これは魔術でもなく、また卵を強く振ってカラザを切り、黄味を沈下させて立てる方法でもない。ましてやコロンブス流でもない」といっている。みなさん、今年はもう駄目だが、来年の立春にお試しになってはいかが。

こうはっきりと報道されていると、如何に不思議でも信用せざるを得ない。おまけに、この話はあらかじめ米国でも評判になり、紐育でも実験がなされた。ジャン夫人というのが、信頼のおける証人を前にして、三日の午前この実験に成功したのである。

「最初の二つの卵は倒れたが、三つ目はなめらかなマホガニーの卓の上に見事に立った。