轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

たてふだ

立札

豊島 与志雄

――近代伝説――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,218 字 · 21 页

青空文庫

ところが、君は楠とは違うんだ。君なら、生涯荷って歩いても、胸に抱いて歩いても、大丈夫だとの自信がもてる。僕にはそれくらいの力はあるよ。だから、どうだい、一緒に行こう。」

彩紅は朱文の眼の中を覗きこんで、いいました。

「あなたの気持、あたしにも分るわ。だけど、あたしにはとても、あなたと同じような力が持てそうにないの。」

「だから僕が生涯、おぶったり抱いたりしてあげると、いってるんだよ。」

「でも、あたしの方に、おぶさったり抱っこしたりする力も、なかったとしたら……。」

「なぜそんなことをいうんだい。」

「もう、ほんとに生きてしまったの。有難いわ。」

彩紅が急に涙ぐんでよりかかってくるのを、朱文は胸に受けとめて、じっとしていましたが、俄に涙をはらはらと流して、彼女を力一杯に抱きしめたのでありました。

朱文のことは、それきり、この土地では行方不明に終って、その消息の片鱗さえも伝わっていません。

ただ、右のことから翌々日の朝、彩紅の溺死体が、河の岸近くに発見されました。張氏へあてた簡単な遺書がその居室にありましたので、自殺だということが分りました。遺書の文句は不明でありますが、それに随ってとかいうことで、彼女の死体は、張家の楠の根本に、鄭重な楠材の棺に納めて葬られ、漆喰でぬり固められました。