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たちがれ

立枯れ

豊島 与志雄

「改造」1933(昭和8)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,613 字 · 41 页

青空文庫

だが、中江にしてみれば、彼女が時々胃部や腹部に鈍痛を感じ而もその鈍痛があちこち移動することや、また胸部に圧痛を覚えたりすることなどが、彼女の健康の全般的の衰微を暗示するように思われ、どこか一定の箇処の病兆よりも、一層気にかかるのであった。そうした彼女が、病気なんかどうでもよいと、ふだんは投げやりな態度をとっていて、さて、中江が一緒に小泉のところへついてきてくれるとなると、わりに容易く承知してやってくる、そのことが、中江の心にはひしと、重荷みたいになって感ぜられるのだった。その重荷を背負って、而も自宅からのように装って、昨夜の二人の宿から電話をかけて、昨夜のままの肉体を運んできたのである。キミ子にとってはもう、昨夜からのことは跡形もなく、今日は今日といった調子で、しきりに小泉のことなどを尋ねかけるのだった。――「医学博士って肩書は、何んだかお爺さんくさくって、若い人には、却って損ね。」彼女らしい意見で、これから診察を受けるなどという気持は、遠くへ薄らいでいた。それに中江も引きこまれて、変に図々しいものを心の片隅に押しこんで、小泉の家まで来てしまった。