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きょうそう
競漕
久米 正雄
「新思潮」1916(大正5)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,312 字 · 34 页
(津島は宗教哲学を専修していたのである)窪田自身も卒業期ではあるが、これでは自分の呑気をもって他を律するわけには行かないと思った。しかし話だけはして見ようというので相談して見ると、津島ももともと短艇がそう厭ではないし、ことに舵に廻るとなれば出たいのは山々であるが、到底出るわけには行かない。卒業論文の方はいいにしても四月始めには故郷へ帰って結婚するはずになっていると言うのである。さすがの窪田もこれを押しきって出ろと勧めるわけにはなおさら行かない。そのばかに困却した態度を見ると津島も気の毒に思った。そして二人でまた新らしく後任の誰彼を物色して見た。するとその時ふと窪田が久野のことを思い出した。久野なら高等学校の時、組選の舵を引いて敗けたことがある。その前年に体を悪くして転地していたが、もう帰って来ているはずである。現に二三日前も本郷の通りで会った。その時の話ではまた戯曲を書きかけているので、ばかに忙しそうなことを言っていたが、あの男が自分で言うのだから、そう忙しいと定まったわけでもあるまい。まあ行って勧誘して見よう。というようなことに二人は話を定めた。