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わらわないむすめ

笑わない娘

小川 未明

「婦人之友」1921(大正10)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,738 字 · 8 页

青空文庫

」と、老人はいいました。

両親は、これを聞くと、たいそう喜びました。そこで、この老人に、娘の教育を頼みました。老人は、娘に音楽を教えました。また広い圃にはいろいろな草花を植えました。あるときはその花の咲いた園の中で、楽器を鳴らしました。小鳥は、その周囲の木々に集まってきました。美しいちょうは、ひらひらと飛んできて花の上を舞いながら、いい音楽のしらべに聞きとれているように見えました。こんな日が幾日もつづきましたけれど、娘は笑いませんでした。笑わないばかりでなく、前よりもいっそう顔の色が青白く、やつれて見えるのでありました。両親はたいそう心配しました。老人は、不思議に思いました。

「なんで、あなたは、そんなに憂わしい顔つきをしているのじゃ。」と、老人は、娘にききました。

すると、娘は、目にいっぱい涙をためて、

「この真っ赤な花弁に、晩方の風がかすかに吹き渡るのをながめますと、私はたまらなく悲しくなります。音楽の音色も私の心を楽しませることはできません。」と、娘は答えました。

さすがに徳の高い老人も、このうえ娘を快活にする術を考えることはできなくなりました。