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だいよじげんのおとこ

第四次元の男

海野 十三

「ユーモアクラブ」1940(昭和15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,156 字 · 18 页

青空文庫

しかしわたくしが道をさけるいわれは一向にないことに気がついた。相手は二人でたのしんでいるのである。われは一人で一向楽しんでいない。しからば恵まれたる彼等は、恵まれざるわれのために道をゆずるぐらいのことはしてもよいではないか。

そう思ったわたくしは目をつぶらんばかりにして前進した。

(あぶない!)

どすんと、わたしの身体は、若き男の方にぶつかった。

「あいたッ」

と、その若き男は叫んだ。そしてよろよろとうしろによろめいた。(倒れるか、気の毒に……)と思ったのは、わたくしの思いあやまりで、かの若き男は、ぐっと一足をついて体勢をたてなおした。

「おや、へんだな。――そして僕は伯父にいったんだ。僕はこれがうまくいかなければ……」

と、早口で喋るのは、その若き男であった。

「あら、どうしたの、今? あんた倒れそうになったじゃないの」

と、若き女がいった。

「ああ、なんだか身体が、あんな風になっちゃったんだよ。もういたくも何ともないよ。――それで僕は伯父に……」

「だけれど、へんね。まるで、目まいでも起こしたようだったわね」

「なあに大したことはないよ。僕、このごろすこし神経衰弱らしいのでね」