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ふんにょうたん

糞尿譚

火野 葦平

在线阅读火野 葦平《糞尿譚(ふんにょうたん)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,974 字 · 99 页

青空文庫

細い眉毛は墨で引いたようにはっきり反っていた。顎をこころもち引きながらものをいうところは、どこか照葉に似ているなどと思い、彦太郎は酔の廻るにつれて、あやしげな気持になって行くのをどうすることも出来なかった。浴槽の中での幸福な気持が、いつにない弛緩した心を誘い出したのかも知れない。あら、鯛網があがったわ、と叫んで窓際に女は出て海の方を見たが、夕風におくられて、白粉の匂いがぷうんと彦太郎の鼻を打った。風に吹かれてまくれた裾から赤いものがちらと覗いた。もはや、彦太郎は、天魔に魅入られたごとく、邪念から逃れ去ることが出来なくなったのである。女は、あら、徳利がないわ、と云って出て行った。いつの間にか十本から上の酒を矢継早に腹に入れていた。しきりと思い出される照葉の想念を追いやるごとくにしながら、くくれた顎の似ていることが、彼をけしかけるように彼の心意を攪乱した。いつか、夕暮れ時、便所の汲取口から見た女の身体が、眼の先にちらつき、既に充分酔の廻った彦太郎は、囮を待つ猛獣のように待機したのである。彼は海に面した窓の障子を閉めた。やがて、階段に足音が聞え、徳利を持った女が入って来た。