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こうもうけいせい

紅毛傾城

小栗 虫太郎

「新青年」1935(昭和10)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,403 字 · 50 页

青空文庫

海気に焼け切った、横蔵の精悍そのもののような顔――鋭く切れ上がった眥、高く曲がった鼻、硬さを思わせる唇にもかかわらず、その髪は、豊かな大たぶさにも余り、それが解かれるとき、腕に絡んで眠る水精のように思われたのだった。

しかし、それには理由があって、以前大陸の東海岸に近いある町で、偶然フローラは、一枚の木版画で日本という国を知ったのであった。

それには、顔に檜扇を当てた、一人の上が、丈なす髪を振り敷いて、几帳の奥にいる図が描かれてあって、それに感じた漠然としたあこがれが、いまも横蔵の、美しい髪を見るにつけ意識するともなく燃え上がったのであった。

「ホホホホ、お難かりもほどになさいませ。いま一の絃をしめて、私調子を合わせたばかりのところでございますわ」

と華奢な指に、一筋髪を摘まんで、輪になったそれを解しながら、

「ではいっそのこと、合わせ鏡をしたら……。それほど、私の顔を御覧になりたいのなら――、いかがでございますか」

と持ち添えた、二つの鏡をほどよく据えて、前方の一つ――なかに映った横蔵の顔を、じっとのぞき込んだときだった。

何を見たのかフローラは、アッと叫んで、取り落としてしまった。