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しみこぼれ
紙魚こぼれ
木暮 理太郎
「日本山岳会会報」1933(昭和8)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,971 字 · 4 页
此二人先年は余程の豪家にてありしとなり、其咄し承りしゆへ御代官を聞合せけれ共不知、私領なとにや又は巷説哉も不知。
天明の頃浅間山麓にそれ程の分限者があったとも想われないし、生米を齧り酒を飲んで三十三年も地中に生きていたとも考えられないが、また人の一人や二人が呼吸する程の熔岩の隙間がなかったともいえないので、嘘のようでもあり真実のようでもあって甚だ面白い。然し事実は恐らく人家に掘当てた話などに花が咲き実が生って大袈裟に伝えられたものであろうか。次は『曳尾庵随筆』の一文で寛政十二年頃のことである。
日光山中の僧の修験に成たる人の話に、先年日光中禅寺の湖船禅定とて、船にて湖の所所拝礼いたし候処、其船くつかへりて乗合の人数不残湖中へ溺死、其死骸一人もみへ不申候由。又或人中禅寺の山へ女人来候ゆへ捕へ吟味いたし候処、越後より山越に欠落いたし候、山路に迷ひ此所へ来り候由申。元来中禅寺は女人禁制の場所といへ共みちなき処を来りし故、無是非彼女の頭に草履をゆひ付、四つはひに這はせ山を追下し候よし、女には銭一貫文与へ追払ひけるとなり。
中禅寺湖の水は比重の関係か何かで死体が浮かないので有名であるが、水の性質は其頃も今も変りがないと見える。