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けっこん

結婚

中 勘助

「朝日評論 第一巻第一号」朝日新聞社、1946(昭和21)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,520 字 · 11 页

青空文庫

亡くなった姉とは絵のほうで狩谷先生の同門で知りあっている。私のごく近しい親戚の者とお友達の妹とは別の絵の先生の同門で、その小さいじぶん附添っていったりした関係からお友達も顔見知りである。お友達が親のように慕ってる書道の先生は半世紀足らずも昔の実の姉たちの女学校での先生であり、妙子の家とはひと夏葉山で偶ま近処に家を借り、学校が同じところから近づきになって一緒に遊んだそうだ。そのうえ本人は知るまいが妙子の兄弟がその後大学でお友達の叔父さんの学生になり私宅へも入魂に出入りしている。そのほか同藩や同窓の関係などを辿ってゆくと亡くなった姉の生家や親戚、私の友人にも糸が絡んでいる。まことに「偶然」は面白くもまた怖いように目にみえぬ蜘蛛の網を張ってるものである。

約束の日に私は出かけたが途中妙子が亡くなったという急報を得て引返した。妙子には不意に打明けて驚かしてやろうと思ってたものを。この日のことは「蜜蜂」に書いた。改めて打合せた日にはお友達が駅へ迎えにきた。年はとっても女だけに蝙蝠傘で顔をかくして歩くのをなにかと言葉をかけながら並んでゆく。疲れきった体に日盛りの炎天七、八町はらくでなかった。