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えほんのはる
絵本の春
泉 鏡花
「文藝春秋 第四年第一號」1926(大正15)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,447 字 · 13 页
いずれ、主人の方から、内証で入費は出たろうが、金子にあかして、その頃の事だから、人買の手から、その年月の揃ったという若い女を手に入れた。あろう事か、俎はなかろうよ。雨戸に、その女を赤裸で鎹で打ったとな。……これこれ、まあ、聞きな。……真白な腹をずぶずぶと刺いて開いた……待ちな、あの木戸に立掛けた戸は、その雨戸かも知れないよ。」
「う、う、う。」
小僧は息を引くのであった。
「酷たらしい話をするとお思いでない。――聞きな。さてとよ……生肝を取って、壺に入れて、組屋敷の陪臣は、行水、嗽に、身を潔め、麻上下で、主人の邸へ持って行く。お傍医師が心得て、……これだけの薬だもの、念のため、生肝を、生のもので見せてからと、御前で壺を開けるとな。……血肝と思った真赤なのが、糠袋よ、なあ。麝香入の匂袋ででもある事か――坊は知るまい、女の膚身を湯で磨く……気取ったのは鶯のふんが入る、糠袋が、それでも、殊勝に、思わせぶりに、びしょびしょぶよぶよと濡れて出た。いずれ、身勝手な――病のために、女の生肝を取ろうとするような殿様だもの……またものは、帰って、腹を割いた婦の死体をあらためる隙もなしに、やあ、血みどれになって、まだ動いていまする、とおのが手足を、ばたばたと遣りながら、お目通、庭前で斬られたのさ。