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ぞくだらくろん

続堕落論

坂口 安吾

「文学季刊 第二号(冬季号)」1946(昭和21)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,653 字 · 15 页

青空文庫

この人間の対立、この基本的な、最大の深淵を忘れて対立感情を論じ、世界聯邦論を唱え、人間の幸福を論じて、それが何のマジナイになるというのか。家庭の対立、個人の対立、これを忘れて人間の幸福を論ずるなどとは馬鹿げきった話であり、然して、政治というものは、元来こういうものなのである。

共産主義も要するに世界聯邦論の一つであるが、彼らも人間の対立に就て、人間に就て、人性に就て、咢堂と大同小異の不用意を暴露している。蓋し、政治は、人間に、又、人性にふれることは不可能なのだ。

政治、そして社会制度は目のあらい網であり、人間は永遠に網にかからぬ魚である。天皇制というカラクリを打破して新たな制度をつくっても、それも所詮カラクリの一つの進化にすぎないこともまぬがれがたい運命なのだ。人間は常に網からこぼれ、堕落し、そして制度は人間によって復讐される。

私は元来世界聯邦も大いに結構だと思っており、咢堂の説く如く、まもるに価する日本人の血など有りはしないと思っているが、然しそれによって人間が幸福になりうるか、人間の幸福はそういうところには存在しない。人の真実の生活は左様なところには存在しない。