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ぞくだらくろん
続堕落論
「文学季刊 第二号(冬季号)」1946(昭和21)年12月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,653 字 · 15 页
その映画というのは老いたる農夫のゴツゴツ節くれた手だとかツギハギの着物だとか、父から子へ子から孫へ伝えられる忍苦と耐乏の魂の象徴を綴り合せ映せという、なぜなら日本文化は農村文化でなければならず、農村文化から都会文化に移ったところに日本の堕落があり、今日の悲劇があるからだ、というのであった。
この話は会議の席では大いに反響をよんだもので、専務(事実上の社長)などは大感服、僕をかえりみて、君あれを脚本にしないかなどと言われて、私は御辞退申上げるのに苦労したものであるが、この話とてもこの場かぎりの戦時中の一場の悪夢ではないだろう。戦争中は農村文化へかえれ、農村の魂へかえれ、ということが絶叫しつづけられていたのであるが、それは一時の流行の思想であるとともに、日本大衆の精神でもあった。
一口に農村文化というけれども、そもそも農村に文化があるか。盆踊りだのお祭礼風俗だの、耐乏精神だの本能的な貯蓄精神はあるかも知れぬが、文化の本質は進歩ということで、農村には進歩に関する毛一筋の影だにない。あるものは排他精神と、他へ対する不信、疑ぐり深い魂だけで、損得の執拗な計算が発達しているだけである。