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じらいやのはなし

綺堂随筆 江戸の思い出

岡本 綺堂

岡本綺堂『綺堂随筆 江戸の思い出』。同一底本的分册已合并为一书。收入:自来也の話、餅を買う女、四谷怪談異説。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,924 字 · 14 页

青空文庫

十冊で、我来也を自来也に作りかえたのが非常の好評を博して、文化四年には大阪で歌舞伎狂言に仕組まれ、三代目市川団蔵の自来也がまた大当りであった。絵入りの読本を歌舞伎に仕組んだのはこれが始まりであると云うのをみても、いかに「自来也物語」が流行したかを想像することが出来る。そのほかに矢はり鬼武の作で「自雷也話説」という作があるというが、わたしはそれを読んだことがない。おそらく自来也が当ったので、又なにか書いたのであろう。そうして、自来也を更に自雷也と改めたらしい。

こういうわけで、支那の我来也が日本の自来也となり、更に自雷也となったのであるが、それがまた児雷也と変ったのは美図垣笑顔から始まったのである。笑顔は芝の涌泉堂という本屋の主人で、傍らに著作の筆を執っていたが、何か一つ当り物をこしらえようと考えた末に、かの鬼武の「自来也物語」から思いついて、蝦蟇の妖術、大蛇の怪異という角書をつけて「児雷也豪傑譚」という草双紙を芝神明前の和泉屋から出すと、これが果して大当りに当った。所詮は鬼武の「自来也物語」を焼き直したものであるが、主人公の盗賊児雷也を前茶筌の優姿にして、田舎源氏の光氏式に描かせた趣向がひどく人気に投じたらしい。