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しばられたあひる

縛られたあひる

小川 未明

「児童文学」1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,532 字 · 9 页

青空文庫

「しっかり足を縛っておくだぞ、さあ、この繩でな。」といって、父親は、手ごろなじょうぶそうな繩を取り出して、子供の足もとへ投げました。

子供は、だまって、繩を拾って、あひるの足を結んでいました。もう水の上は、ほの白く夜の空の色を映しているだけで、水ぎわに生えているやぶの姿がわからないほど、暗くなっていました。子供は、しばらく、その暗を透かして、水の面がさざなみをたて、あちらこちら泳いでいる、あひるのようすをながめていましたが、手に握っている、繩の端をいばらの木の根につなぐと、さも満足そうに、小舎の中へもどっていきました。それからのこと、暗がりで泳いでいたあひるは、足についた繩の重みで、身動きができなくなったのか、岸へ上がって、やぶ蔭にうずくまってしまいました。

今夜も、ぶなの木は、悲しい唄をうたいつづけました。たぶん、あひるは、何事も夢のようで、意外であった、この一日のでき事を思い出していたのでしょう、目をぱちくりさして、太いくちばしで、傷のついているらしい、翼の下のあたりをなめながら、気にしていました。そのうちに、つい自分が、どこにどうしているということも忘れて、あの居心地のよかった古巣が、この付近にでもあると思ったのか、急に恋しくなって探しはじめました。